宮城県 / 東日本大震災(H23)

災害対応とその検証

初動対応(地震発生後24時間の活動)に対する主な検証項目

※「東日本大震災-宮城県の6か月間の災害対応とその検証-(概要版)」より、「初動対応(地震発生後二四時間の活動)災害対策本部及び地方支部等」を掲載。

初動対応(地震発生後二四時間の活動)/災害対策本部及び地方支部等
No 視点 課題 / 改善の方向
1 計画とマニュアル
課題

帰宅困難者対応についての事前の計画が不十分であり、今後は周辺地域を含めた対応が必要である。

  • 帰宅困難者への対応については宮城県消防計画に記述はされていたが、数行程度であり、具体的な対応内容や手順等については定められておらず、訓練も実施していなかった。
改善の方向

帰宅困難者が多数発生する可能性のある地域の施設と連携した事前計画の検討が求められる。

  • 課題等が浮かび上がった対象 県庁行政庁舎
2 県庁内部での調整
課題

休日や夜間の参集・配備体制については検証が必要である。

  • 本災害は、平日昼間に発生したために、大河原地方支部の構成員の多くは在庁していたが、休日深夜における対応について検討が必要である。
改善の方向

遠距離通勤の職員が多い支部では、休日や夜間の参集・配備体制については、再確認が必要である。

  • 課題等が浮かび上がった対象 大河原地方支部
3 県庁内部での調整
課題

管轄地域が広域であるため、遠隔地の事務所からの参集が困難であった。

  • 災害対策本部地方支部会議は、仙台地方支部に属する各事務所から合同庁舎に集まって開催することになっていたが、被災直後に遠隔地の事務所から合同庁舎に移動することは不可能であった。
改善の方向

職員の通勤手段や参集に要する時間にも配慮して、会議を含めた情報共有の方法を検討し、実効性のある計画を策定すべきである。

  • 課題等が浮かび上がった対象 仙台地方支部
4 資源(物資)
課題

庁舎の被災への対応が不十分であった。

  • 非常用発電機の燃料が不足したため、停電となった状況で、災害対応を行うことになった。
改善の方向

庁舎が被災した場合でも最低限必要な対応ができるよう衛星携帯電話等の通信設備の設置や非常用発電機の燃料確保の方法について検討すべきである。

  • 課題等が浮かび上がった対象 仙台地方支部
5 情報
課題

市町村への派遣職員と連絡が取れず、有効に機能させられなかった。

  • 災害後に県の指定職員が情報連絡要員として市町村に赴いていたが、通信手段がないこともあって、状況を十分に把握することが出来なかった。
改善の方向

市町村への派遣要員が把握すべき情報内容や連絡手段、必要な設備(衛星携帯等)について、詳細に定めると共に、災害時に派遣が困難な遠隔地については、平時の管轄地域にこだわらず担当する事務所を事前に定めておくべきである。

  • 課題等が浮かび上がった対象 仙台地方支部
6 県庁内部での調整
課題

本庁との情報の流れが錯綜し、混乱を招いた。

  • 物資対応については、人海戦術での非効率な作業となった。さらに災害対策本部からの指示に重複や矛盾があったため、混乱を招いた。
改善の方向

今回は事前に業務の想定が出来ていなかったことが、混乱をもたらした大きな要因であった。さらに地方支部内の地方振興事務所各部・各事務所からの情報の流れが、所管課への縦割りの流れと、災害対策本部地方支部経由の流れと二重となっていたことも問題である。今後の災害に備えて、地方支部が本当に実施すべき業務の選定と、地方振興事務所各部・各事務所と本庁間の情報の流れと役割分担を、明確に整理すべきである。

  • 課題等が浮かび上がった対象 仙台地方支部
7 資源(物資、職員)
課題

施設や職員が被災することへの備えが不十分だった。

  • 被災によって各事務所の各組織でも多大な被害が発生した。例えば非常用発電機や災害用通信設備がなかったり、また、ガソリン不足等によって職員の通勤や被害調査に支障が生じた。
改善の方向

施設、設備の被災や職員の通勤への支障を具体的に想定した上で、各事務所において衛星携帯電話や簡易な自家発電装置など最低限の設備機器の備蓄を進めると共に、職員を自宅から通勤できる範囲の事務所に一時的に応援配置するなど、実効性のある災害対応体制の検討が必要である。

  • 課題等が浮かび上がった対象 仙台地方支部
8 物資(物資)
課題

非常用発電装置の燃料補給調達が難航したため、実効性のある協定締結等の対策が必要である。

  • 発災後、庁舎の被害が軽微であり、非常用発電装置も稼働したが、非常用発電装置の燃料調達が難航した。
改善の方向

停電時には人力ポンプで対応するなど事業者側の災害対応体制を確認した上で、災害時の燃料供給に関して実効性のある協定を締結するべきである。また、直下型地震の場合には、甚大な庁舎被害や停電・断水の可能性も含めた防災マニュアルの見直しが必要である。

  • 課題等が浮かび上がった対象 北部地方支部
9 計画とマニュアル
課題

避難所となる場合の対応について検討が必要である。

  • 合同庁舎に大量の避難者が来ることはなかった。合同庁舎は指定避難所ではないが、災害時に集まってきた避難者を建物外に移動させることは現実的に困難である。
改善の方向

県庁が避難所となった経験を踏まえ、大規模災害時に避難者が大量に避難してきた場合に備えて必要な情報・物資等の備蓄・提供について、合同庁舎でも検討すべきである。

  • 課題等が浮かび上がった対象 北部地方支部
10 情報
課題

本部との情報連携を円滑に進めるため、連絡体制や情報フローの整理が必要である。

  • 市町村から把握した要望等の情報については地方支部から本部に報告していたが、3月18日までは、県の災害対策本部会議の内容や資料は地方支部には送られなかった。
改善の方向

地方支部から県庁に情報を伝えるだけでなく、県庁から地方支部への情報発信についても定める必要がある。

  • 課題等が浮かび上がった対象 北部地方支部
11 資源(物資)
課題

自家発電機が稼動したものの、利用できなくなった情報機器もあった。

  • 北部地方振興事務所栗原地域事務所では、地震後に停電をしたものの、事前に整備していた非常用発電機が稼動し、庁内に給電された。しかし、宮城県総合防災情報システム(MIDORI)や、ブースター(増幅器)を必要としていたテレビは稼動しなかった。また、庁内の光IP電話については、発信も受信もできない状況であった。
改善の方向

非常用発電機の設置する際に、その稼動時に、防災活動で重要な電気機器に給電され正常稼動するのかを確認する必要がある。

  • 課題等が浮かび上がった対象 栗原地域部
12 資源(物資)
課題

自家発電機は稼動したものの、電話には給電がされなかった。

  • 地震後に停電したものの、事前に整備していた非常用発電機が稼動し、庁内に給電がなされた。しかし、電話へのバックアップ電源は、非常用発電機とは別系統であったため、12日夜には利用できなくなった(電話のバックアップ電源を、非常用電源と連結する措置を7月に実施済み)。また、衛星携帯電話が配備されていたものの、事前に訓練で利用したことがなかったことから、受信状況の良い場所を発見するまでに時間を要した。
改善の方向

非常用発電機を設置する際には、その稼動時に、防災活動で重要な電気機器給電され正常稼動するか確認する必要がある。また、衛星携帯電話などの非常用通信機器については、非常用電源の確保や燃料の補給、さらに、操作手引書の作成や、操作訓練の実施などが求められる。

  • 課題等が浮かび上がった対象 登米地域部
13 資源(物資)
課題

合同庁舎の被災を想定しておらず、初動対応に支障が生じた。

  • 石巻合同庁舎は、津波による浸水想定区域外であったが、今回、想定を越える津波の被害にあったため、1階の非常用電源、備蓄物資が水没、3日間庁舎が孤立したため、初動対応に支障が生じた。
改善の方向

衛星携帯電話の増設や携帯トイレ・食料等の備蓄、通信設備の高層階への移設等の事前対策を充実させるとともに、地震の揺れによる庁舎被害や停電・断水を想定した対応についても検討する必要がある。

  • 課題等が浮かび上がった対象 東部地方支部
14 資源(物資)
課題

合同庁舎が津波避難ビルとなり、多くの周辺住民が避難することができた。

  • 津波避難ビルとなることは事前には想定されていなかったが、合同庁舎は事前に耐震改修をしていたため地震の揺れによる倒壊を免れ、周辺地域の住民約300人の貴重な避難場所として機能した。電気が使えないうえ食料等も不十分であったため避難環境としては良好とはいえないものの、もし合同庁舎が全壊し、避難することができなければ、住民の被害が拡大していた可能性がある。
改善の方向

合同庁舎等の公共施設の耐震性・安全性の確保を迅速に進めることが求められる。合同庁舎等の県有施設を津波浸水地域外に移転させる可能性があるが、その場合には、代替となる津波避難ビルの確保など地域の安全確保にも留意すべきである。

  • 課題等が浮かび上がった対象 東部地方支部
15 資源(物資)
課題

石巻合同庁舎の代替拠点が確保できず、業務が非効率であった。

  • 合同庁舎から、まず東部下水道事務所に地方振興事務所ほか庁舎内地方機関が移ったが、スペースや設備が不足し、業務環境としては劣悪であった。
改善の方向

あらかじめ代替拠点を決めていた気仙沼地方振興事務所の事例等を参考に、地方支部の各事務所が被災した場合の代替拠点や、その場合に必要となる県庁からの支援(人員、設備等)についても検討することが望ましい。

  • 課題等が浮かび上がった対象 東部地方支部
16 資源(物資)
課題

石巻合同庁舎に避難してきた地域住民に対する支援を、健康に配慮しつつ実施した。

  • 合同庁舎に避難してきた地域住民に対する支援を、東部保健福祉事務所が中心となり行った。避難している人の健康状況を確認し、体調が悪い人や人工透析患者などの医療支援が必要な人を別室に集め、東部保健福祉事務所の医師・保健師等が対応したことはとても有効であった。
改善の方向

災害時には地域住民が行政機関に避難してくることが想定されることから、合同庁舎内に食料・物資・医薬品などの備蓄を行うとともに、庁舎に避難してくる住民への支援策を検討しておくことが求められる。

  • 課題等が浮かび上がった対象 東部地方支部
17 資源(設備)
課題

備蓄していた可搬型VSATを、事前の準備により迅速に運用できたが、地方支部業務を行うためには非常用通信機器数が不足した。

  • 地方支部業務を行うためには、備蓄していたVSAT衛星携帯電話と可搬型VSAT無線機では回線数が不足した。
改善の方向

より業務を円滑に遂行するためには、非常用通信機器の備蓄数の増強が必要である。

  • 課題等が浮かび上がった対象 気仙沼地方支部
18 計画とマニュアル
課題

気仙沼保健福祉事務所の職員は、初動期において、事務所業務に加え、対策本部の一職員としての業務も行った。

  • 気仙沼保健福祉事務所の職員のうち、保健活動支援に従事する保健師、理学療法士、管理栄養士や薬剤師、獣医師等の技術職員を中心に現地巡回する等、被害状況を把握するという重要な役割を果たしたが、管内の全体的な被害状況の把握は困難であったため、保健福祉施設・水道施設等の被害状況調査、入所者や職員の安否確認、避難所や在宅の高齢者・障害者等の被災者への支援策の検討等に時間を要した。
改善の方向

広域で甚大な被害が発生する災害であっても、より迅速に対応できるよう、通信連絡手段の確保等や災害直後に保健福祉事務所として活動する内容を確認し、内陸部の他の保健福祉事務所との協力体制の構築について再検討することが重要である。

  • 課題等が浮かび上がった対象 気仙沼地方支部
19 県庁内部の調整、情報
課題

地方支部が被災した時の対応を事前に検討しておくべきである。

  • 地方支部が被災した場合には、通常時のように市町村の支援ができない。
改善の方向

本庁と地方支部、被災市町の情報の流れや、本庁や他の地方支部からの応援人員の派遣を含めて、地方支部が被災した時の対応について事前に十分に検討しておくべきである。

  • 課題等が浮かび上がった対象 気仙沼地方支部
[東日本大震災-宮城県の6か月間の災害対応とその検証-(概要版)平成24年3月 より]
出典

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