兵庫県 / 平成16年台風第23号

問題点・教訓

県の災害対策本部体制、関係機関との連携

  • 県民局や市町の庁舎が浸水するなど、災害対策の拠点が十分機能しないなか、県災害対策本部では、迅速な情報収集に迫られた。
  • 本庁(県災害対策本部)、県民局(県地方本部)、市町との連携が必ずしも円滑ではなかった。
  • 初動期には市町災害対策本部の対応能力を超え、災害情報の収集・伝達に遅れが見られた。
  • 最も大きな被害を受けた但馬地域、淡路地域の災害情報の入手に時間を要した。
  • 情報が入らない場合の対応方法が事前に明確に定められていなかった。
  • フェニックス防災システムの機能が十分活用されず、関係機関等の間で災害情報の共有化が迅速に図れなかった。
  • 全庁体制に伴うスペース不足、対策の長期化による災害対策業務と平時業務との混在など、県災害対策センターの機能・レイアウトが必ずしも十分でなかった。
  • 少子高齢化、サラリーマンの増加等による、人員不足や、住民自身の被災などにより、自主防災組織が十分機能しなかった地域がある。

災害情報の伝達、要援護者の避難誘導

豪雨で状況の把握が困難ななか、5市町村5万6千人に避難指示、42市町12万人に避難勧告が出され、住民への迅速な伝達や誘導に迫られた。また、県内の死者26名のうち、高齢者が半数を占め、避難できないまま自宅で溺死したケースもみられた。

  • 避難勧告が遅れたとの批判があるほか、住民が避難勧告を知らなかったケースもあった。
  • 市町からは、避難勧告や指示についての判断基準が不明確な上、判断するための十分な情報が得られない、との意見がある。
  • 住民についても、避難勧告を出しても避難しない、家族を迎えに行ったり、田畑を見に行ったりして被災するなどのケースがあった。
  • 高齢者をはじめとする要援護者への情報伝達や避難等に係る具体的な対応が明確でなく、十分に対応できなかった。
  • 個人情報保護意識の高まりにより要援護者情報の把握が困難になるなど、社会情勢も変化していることから、「要援護者の命を災害から守る」ための具体的な方策を総合的に検討する必要がある。

災害ボランティア活動の支援体制

水害では多くのボランティアが活躍したが、行政との連携、迅速な受け入れやコーディネート機能などについての課題も顕在化した。

  • 災害ボランティアと行政の連携の仕組みや、具体的な役割分担が明確になっていなかった。
  • 災害ボランティア活動支援体制の早期立ち上げと円滑な活動支援展開のため、ひょうごボランタリープラザと、県下市町社会福祉協議会ボランティアセンター、NPO、近隣府県社会福祉協議会等協力機関との平常時からのネットワークを強化(各協力機関の役割の明確化・相互認識)しておく必要がある。
  • ボランティア活動保健掛け金、ボランティアバス運行に係る経費負担、行政が有する資機材の貸し出し等の迅速な支援が十分でなかった。

総合的な治山・治水対策

記録的な豪雨と強風により、山の崩土、風による人工林の倒木、ため池の決壊、農地や河川、道路の被災など、流域全体にわたり連鎖的かつ広範囲な災害が発生した。

  • 大規模な風水害にハード面で対応するには膨大な予算と時間が必要であり、優先度・緊急度を考慮したハード対策の見直しと、ソフト対策を組み込んだ総合的な防災・減災対策に取り組む必要がある。
  • 今回の水害では上流域からの風倒木及び土砂の流出やため池の決壊による中・下流域の被害の拡大が目立ったため、国、県、市町、森林、ため池管理者等の行政や管理の枠組みを超えて、流域全体の視点から水害の総合的な対策に取り組む必要がある。
  • ハザードマップの作成などにより、住民への洪水・土砂災害危険度を周知し、避難を支援する必要がある。
  • 浸水や土砂崩壊が発生する危険性の高い地域で市街化が進展している。
ページの先頭へ戻る