平成28年度 高病原性鳥インフルエンザ

防疫対応

防疫体制の構築

(1) 農林水産省では、高病原性鳥インフルエンザに関する国際的な発生状況について同省の家きん疾病小委員会の委員や国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構動物衛生研究部門(以下「動衛研」という。)の研究者からの意見も踏まえ、平成28年秋の渡り鳥の渡りの時期以降、本病に対する厳重な警戒が必要と考え、平成28年9月、都道府県あて通知を発出するとともに、都道府県の家畜衛生担当者等を参集とした全国会議を開催し、本病対策に万全を期すよう注意喚起を行った。また、同年10月以降、欧州、韓国等において、家きん及び野鳥で高病原性鳥インフルエンザウイルスが確認されたことから、環境省とも情報を共有し、全国への注意喚起を行うとともに、さらに、 11月18日には鹿児島県出水市で採取された水から高病原性鳥インフルエンザウイルスが初めて確認されたことから改めて全国への注意喚起を行った。

(2) 都道府県においても、家きん飼養農場に対し、国際的な発生状況について情報提供を行い、厳重な警戒を呼びかけるとともに、防疫演習の実施、関係者間の連携体制の確認、必要な人員及び防疫資材の確保等の万一に備えた準備を行っていた。

(3) これらの結果、飼養者、都道府県、国等の関係者間において、本病に対する危機意識の共有と発生時を見据えた体制の構築が図られ、このような発生前の備えが、平成28年度の防疫対応に有効であったと考えられた。

発生時の対応

(1) 平成28年度における、かつ、あひる飼養農場における初めての発生確認となった青森県の事例に関し、感染試験を踏まえると、あひるでは感染後直ちに死亡が急増するとは必ずしも言えず、このような中、飼養者からの早期通報と迅速な防疫対応によって、2例の発生で抑えることができた。韓国においては、あひるでの発生が同国における本病のまん延の要因となっている可能性が示唆されており、あひるでの発生を速やかに封じ込めたことは、28年度の防疫対応において重要なポイントだったと考えられる。

(2) 平成28年11月の最終週においては、青森県での2事例のほか、新潟県でも、31万羽と24万羽規模の鶏飼養農場で連続して発生が確認されたが、自衛隊も含め関係者の協力により迅速な防疫措置が講じられた。青森県及び新潟県における発生は、東北地方や北陸地方における初めての発生にも関わらず、迅速な防疫対応が図られたことにより、全国における発生リスクが高まっている中、その後の発生においても迅速な対応がなされることにつがなる模範的な対応事例であったと考えられた。

(3) また、今般の一連の事例では、自衛隊のほか、関係省庁等、都道府県の家畜衛生担当部局以外の部局や市町村、JAを始めとする農業関係団体、建設業者、炭酸ガス供給業者、ペストコントロール協会、ホームセンター等の資材供給業者等の積極的な協力が得られ、また、人員の派遣や防疫資材の提供など、都道府県間の協力も得られた結果、防疫対応が極めて有効に機能したと考えられた。

まとめ

   平成28年11月以降、日本と同じ環日本海地域に位置する韓国においては、平成29年6月15日までに家きんにおいて最大規模となる383件の発生があり、3,787万羽の殺処分が行われた。一方、日本においても、野鳥等で最大規模となる218件の発生が確認された。これは、日本においても、韓国と同様に、家きん群に対する極めて高いウイルス侵入リスクがあったことを示している。
   しかしながら、このような状況であったにも関わらず、日本での家きん飼養農場での発生件数は、平成22年度シーズンと比較して半減(平成22年度は、野鳥等では64例、家きんでは24件)している。これは、これまでの発生経験も踏まえ、全国的な防疫水準が向上し、万一に備えて構築してきた防疫対策が有効に機能した結果と考えられた。

出典
ページの先頭へ戻る