豪雨災害特集豪雨災害への備え

平成24年7月九州北部豪雨

日田市を襲った未曾有の豪雨

大分県日田市の防災ご担当者から、今後の防災への取り組みと他の自治体へのメッセージをお聞きしました。

迅速な立ち上げから半月にも及ぶ災害対策本部での対応

 日田市では、7月3日の7時半に災害警戒室を災害対策本部へ格上げしました。
 実は市では3日の集中豪雨の発生前から降雨が続いており、その降雨の状況下でも、なかなか対応が難しい局面がありました。そんな中で7月3日に大雨警報が発表されたことを受け、早急に災害対策本部へ格上げすることとなりました。
 その後も継続して雨が降り続き、災害対策本部が縮小されたのは7月18日になってからでした。対応を行う上でも、3日の集中豪雨よりも11日からの九州北部豪雨の方が、広範囲にわたる被害が発生したため苦労は多かったですが、3日から災害対策本部が引き続き設置されており、流れは既に出来上がっていました。
 そのため、九州北部豪雨の被害は非常に広範囲ではありましたが、何とか対応が出来たという状況でした。

花月川の氾濫により冠水した国道212号(2012年7月3日)

花月川の氾濫により冠水した国道212号(2012年7月3日)

今回の市としての対応についての反省点・改善点

 今回の災害では、道路等の被害件数が多かったことから情報の集約に時間を要し、本部から各班(避難所運営班など)に的確な情報を与えることができず苦慮しました。また、班毎の各種対応についても、互いに活動内容の情報共有がうまくいきませんでした。
 特に、道路の被害情報については、各種災害対応に関連することから、道路管理者(国、県、市)の連携を深め、情報の集約を図る必要があると思います。
 また、物資の調達や避難所の運営など、どこまでを自らの力で行っていただき、どこからは行政が行うのかといった自助・共助・公助の線引きが不明確であったことも 反省点として挙げられます。
 今回避難所では、運営を市の職員だけで行ったのですが、自主防災組織との連携が図れていれば、もっと避難者の皆様に迷惑をかけずに済んだのではと思う部分もあります。
 自治体の職員ではなかなか気付かない点なども、避難者目線での意見を取り入れながら、住民自らが運営するということも必要であると感じました。

小野川の増水と山からの山砂により被害を受けた県道宝珠山日田線(2012年7月3日)

小野川の増水と山からの山砂により被害を受けた県道宝珠山日田線(2012年7月3日)

他の自治体へのメッセージ

 今回、災害の対応をした中で、様々な機関が災害対策本部に入り、連携を取る場面がありました。今思えばその場で問題点を相談し、改善できる部分があったのではないか、と思っております。
 災害が起こる前に、災害対応に関わる全ての機関がどのような方法で、何の情報について共有し、連携をはかっていくのかを明確にしておくことが重要ではないでしょうか。

  • コラム

    物資供給の協力体制

 当センターでは日田市からの物資要請を受け、福岡県大牟田市にあるコメリの流通センターより、日田市へと運ぶ物資の手配をし、トラックを出発させました。
 しかし、豪雨のために高速道路が通行止めとなり、迅速な物資供給が難しい状況に陥りました。この状況を受け、日田市災害対策本部の方がいち早く高速道路のインターの入口に連絡をしてくださり、通行止めとなっている高速道路を、緊急車両として通行させていただくことができました。
 物資を供給する側の当センターとしても、できる限り迅速に物資を供給できるよう鋭意努力をしておりますが、道路に関しては力の及ばぬ分野。各自治体と協力し、被災地域にとって必要なものを、必要な時にお届けできるよう、より密接な体制作りが必要であると感じました。

平成23年7月新潟・福島豪雨

三条市豪雨災害「度重なる水害を乗り越えて」

新潟県三条市の防災ご担当者から、今後の防災への取り組みと他の自治体へのメッセージをお聞きしました。

7・13水害発生後の取り組みについて

 ハード面の整備として、県による五十嵐川の河川改修をはじめ、橋梁の架け替え、排水機場の改築などが実施されました。ソフト面の整備としては、大きく分けて6つの取り組みを行ってきました。
1.情報伝達、情報収集の迅速化
2.水害対応マニュアルの整備
3.避難勧告等の発令基準を明確化
4.災害時要援護者対策の強化
5.豪雨災害対応ガイドブックの作成と配布
6.災害時の相互応援協定の締結

三条市豪雨災害対応ガイドブック

三条市豪雨災害対応ガイドブック

平成23年水害後に新たに見えてきた課題

 昨年度、様々な検証を行った結果、新しい課題が見えてきました。
 まず市としての情報収集活動についてですが、市域が広い為、自治会長等地域からの情報提供を活用した、市内全域の状況を把握できる体制を確立することとしました。
 情報伝達については、災害情報が流れると自動で電源が入る「緊急告知FMラジオ」で情報を得ることができたという方が多かったことから、70歳以上の高齢の方へ無償貸与していたものを、対象年齢を昨年度から5歳引き下げて65歳以上へと変更し、対象者を増やしました。
避難活動及び避難所については、自治会長や民生委員等地域の代表の方にお集まりいただき、避難所検討委員会を開いて、災害発生時に命を守る避難所とはどうあるべきか、避難生活が長期化した際に暮らしを支える避難所とはどうあるべきかを検討してまいりました。その検討を受け、民間施設を含めた避難所のあり方や、避難所に介助が必要な方が避難してきた場合の対策・支援方法のあり方について、市の担当部署による対策を進めております。

他の自治体へのメッセージ

 災害時は、規模が大きくなればなるほど行政に出来る事が限定されてしまいます。
 市町村としては、地域や個人それぞれが防災に向き合う活動をしていただけるよう、常に働きかけていかなければならないと考えています。
 実際に災害が起きた時に的確に動くためには、それぞれが個別で対応するよりも、自助・共助・公助が連携して活動するために、各主体別に役割分担を明確化することが大切です。個人、地域、行政それぞれの立場で防災活動を活性化し、それぞれが連携していかなければ、大規模な災害には対応できません。
 災害から自分達の命を守るのは自分達であるという意識を市民の皆様に持っていただくこと、日頃からその支援をしていくことが行政の役割だと思います。

  • コラム

    NPO法人コメリ災害対策センター 設立のきっかけとなった7.13水害

 今回、7・13水害や平成23年水害による被害が大きかった三条市様に取材をさせていただきましたが、この7・13水害は、NPO法人コメリ災害対策センター設立のきっかけとなった災害の一つでした。
 株式会社コメリでは、NPO法人コメリ災害対策センター設立以前から、社会貢献活動の一環として、お世話になっている地域のために利益の1%を還元していくことを決定し、園芸や農業分野における研究開発事業への助成や、従業員が幼稚園や小中学校等にボランティアで花を植える「コメリ緑資金ボランティア」を行なってまいりました。
 そのような活動が広がる中、平成16年に7・13水害が発生し、コメリの創業の地である三条市が1.5メートルの浸水を被りました。店舗も被災する中、コメリは出来得る限りの支援を行い、市では通常の生活に戻るための復興が始まりました。
 しかしそれから3ヶ月も待たずに、10月23日の新潟県中越地震が発生しました。コメリの出店エリアが広がるほどに災害を目の当たりにすることが多くなり、日頃コメリ店舗をご愛顧いただいているお客様が、ある日突然被災者となってしまう姿を見て、日頃の恩返しができないものかと思案しておりました。
 これらの経験から、災害への積極的な対策の必要性を感じ、災害対策に取り組むための永続的な基盤として「NPO法人コメリ災害対策センター」を設立することとなりました。