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台風第15号

トップバナー 過去の経験に基づく初期対応 史上2番目の台風にどう対応したのか

過去の経験に基づく初期対応
史上2番目の台風にどう対応したのか(館山市)

【人的被害】
■軽傷者:1名

【住家被害】
■全壊:97棟
■半壊:1533棟
■一部損壊:4701棟  など

1.台風第15号による被害について

 台風第15号は、館山市で観測史上2番目となる最大瞬間風速48.8m/sを記録し、南南西からの猛烈な風により、建物被害、停電や断水、通信障害など、市内全域に甚大な被害をもたらしました。特に暴風による電柱の倒壊等により発生した大規模停電は、2週間近くの長期に及び、市民生活に大きな影響を与えました。
 災害により発生した災害廃棄物の量も膨大であり、暴風によって飛散した屋根材、損傷を受けた家屋壁材、浸水被害にあった畳材や家財等、被災した家屋からの廃棄物のみならず、今後は全壊家屋等の撤去に伴う災害廃棄物も予想されます。
 暴風による屋根材飛散により家屋が大きな被害を受けましたが、一度に多くの被害家屋の修復をすることはできず、半年経つ現在においても多くの家屋が修理をできていない状況です。従って、当時はブルーシートによる応急修理で凌いだと言うことが適当であると考えています。
 それよりも、台風第15号による被害の中でも特に影響があったのは、長期停電であったと考えています。市民生活に直結していた電気という面が、長期停電の発生により、「冷蔵庫が使用できない」、「ポンプが起動しないため集合施設のトイレが使用できない」等、副次的な不具合が多く発生する事態となりました。
 また、館山市が所在する安房地域も、房総半島全体が同じような被害、長期停電になったため、当時は広域で市民生活に必要な物品が不足し始めていました。発災直後1週間の間で、一般の商店等でも購入できず、市からも調達できない物資が生起していたと考えています。


2.台風上陸時の初期対応や、対策本部の活動

 館山市では、地域防災計画のほかに「職員初動マニュアル」を策定しており、災害発生時にはそれらに基づいた対応を行っております。
 台風第15号の接近に伴うタイムラインに基づく行動基準は早期に作成していましたので、それぞれの事案に対する職員の招集については、特段の不具合、調整事項等はありませんでした。
 その結果、台風の最接近時刻は9月9日2時30分でしたが、それよりも早く前日の8日13時には災害対策本部も設置しており、15時には「避難準備・高齢者等避難開始」を発表しました。同時に避難所も11か所を開設させることができ、初動対応においては時間的余裕がありましたので、問題はありませんでした。
 台風最接近時より市内で停電が発生し始めましたが、災害対策本部を設置していた庁舎では幸い停電とならず、被害確認や災害対策本部の運営に支障は出ませんでした。地上系、衛星系による防災情報システムも可動していましたので、千葉県災害対策本部との連携も通常状態を維持することができていました。また、市内所轄の警察署、消防署との電話連絡に問題はなく、館山市消防団の各部詰所とも、無線連絡が可能な状態でした。
 9日の朝方から、NTT固定電話局との交信が途切れる事態が発生し始めましたが、各関係機関とはバックアップ用の衛星携帯電話を使用することで、通信体制を維持しました。
 実働的な面においては、台風最接近時の時間帯は市職員や消防団員の身の安全を最優先としていましたので、屋外での作業は控えていました。同様に、災害対策本部の各班編成に基づく各業務についても、最も酷い台風の影響がなくなるまで、室内で待機することとしていました。その後、朝方になり周辺の状態が確認できるような状態となってから、被害状況の確認等のために屋外での活動を開始しました。

3.マニュアルの課題点について

 マニュアルは、台風被害を受けて、または問題点を把握したことによる大きな変更はしていません。
 ただし、台風第15号の後に上陸した台風第19号の際には、先の被害が大きかったこともあり、予想以上の避難者が集まりました。例年の台風等接近時における市内全部の避難所での収容人員数は、約50~60名ですが、過去最多となる17ヶ所の避難所を開設し、合計で約2,300名の避難者を収容することとなりました。
 このことについては、避難所で市民対応をする職員の割り振りを苦慮する点があり、新年度からの「職員初動マニュアル」において、想定を超える避難所の開設が必要となった場合の職員割合について、再度検討をしております。

4.物資調達について

 暴風の影響により、多くの家屋で屋根材飛散による屋根の破損被害が発生し、市としても市民に配布するブルーシートの購入、手配が多い状況でした。台風第15号、19号を合わせて、ブルーシートについては6万枚以上を調達しました。
 暴風被害のほかにも、長期停電に対応するため、LED強力ライト、ランタンタイプの室内用LEDライト、三脚付LED投光器を手配、入手しました。また支援物資として、飲料水、応急食糧、紙おむつ等の提供を数多く受けました。これらについては、市で手配、調達調整を行ってきましたが、支援物資として贈られて来た量も多く、発災後の支援物資の有り難さを痛感したところです。
 市の備蓄については、現状では目標備蓄量に到達している備蓄品がなく、それぞれ経年調達で備蓄量到達を目指しているところです。

5.今後想定している取り組みや課題について

 館山市は多くの海岸線に囲まれた地勢であるため、今後発生が予想されている南海トラフ巨大地震による津波被害に対して憂慮しているところです。
 海岸線に有効な防波堤、防潮堤などの建設は、必要経費から簡単に整備することは難しいため、これらハード対策を実施する前にハザートマップの習熟、避難場所・避難経路の確認や実際に自分の足で行動する避難訓練の実施など、海岸線付近に居住している市民へのソフト対策の充実を図っていきたいと考えています。

6.協定締結先について

 NPO法人コメリ災害対策センターには、台風最接近後の9日朝方にブルーシート、続けて10日にもブルーシート及び土のう袋の要請をさせていただき、どちらも翌日に入手することができました。これからも、自治体が困っている時に相談ができるような関係を築かせていただきたいと思っています。

館山市ビニールハウス 館山市ビニールハウス

暴風により被害を受けたビニールハウス

POINT
■対策・提案
運営面  ・職員初動マニュアルの整備
・屋外での作業の自重


物資面  ・補修関連の資材調達
・長期停電時の備え、対応