台風初の”特定非常災害”
台風第19号

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災害対策本部の円滑な運営と他自治体への支援(岩手県)

【人的被害】
■死者:3名
■重傷者:4名
■軽傷者:3名

【住家被害】
■全壊:46棟
■半壊:838棟
■一部損壊:912棟
  など

台風上陸前後の対応についてお聞かせください

1.台風上陸時の初期対応や、対策本部の活動について

 この度の台風対応では、13日の未明から朝にかけて本県に最接近することが見込まれていたことから、早期の警戒体制を確立するため災害対策本部を設置することを決定し、12日の16時前に関係職員に対して県庁等へ参集するよう連絡を行いました。
 その中でも、災害対策本部支援室※の室員に指名された職員についてはほぼ全員が18時前には参集し、それぞれの担当業務の配置に就きました。
 18時に災害対策本部を設置した後、19時に災害対策本部員会議を開催し、台風への早期の警戒体制の確立等について協議いたしました。
 その後、被災市町村から県に対し自衛隊の災害派遣要請の連絡があったことから、13日(日)未明に自衛隊に対し、災害派遣要請を行いました。
 災害対策本部では、本部長である知事と本部員である部局長が、本部員会議において災害応急対策の総合的方針を決定します。そこで決定された方針に基づく行動を具体化するため、災害対策本部支援室において各業務の優先順位及び役割分担を調整します。
 各部局は、本部支援室と連携し、調整した優先順位に基づき、県地域防災計画に規定された所掌事務を実施しました。
 台風が上陸し、13日に県内14市町村に大雨特別警報が発令された際には、同日午前3時に災害救助法の適用を決定し、災害応急対策を迅速に実施できる体制を構築しました。
 なお13、14日には午前と午後の2回、各地の被害情報及び市町村等の防災関係機関の対応状況の取りまとめを行い、被害状況の把握と迅速な災害応急対策の実施に努めました。

2.マニュアルの課題点について

 災害対策本部の運営は、「岩手県災害対策本部規程」に、災害対策本部支援室の運営は「本部支援室運営マニュアル」に基づいて行われ、災害対策本部については、規程に基づき概ね円滑に運営できたと考えております。
 ただし本部支援室については、1ヶ月の長期的な運営を実施するための職員の交代、仮眠室の設置等が規定されていなかったため、運営間に適宜定めて実施することとなりました。今後は、実際の運営実績を踏まえ、「本部支援室運営マニュアル」を修正し、訓練により検証を行っていく予定です。

3.物資調達と協定締結先について

 今回の台風災害における協定締結先への要請物資としては、浸水害に対しての作業用品としてブルーシート、土嚢袋、消石灰、ゴム手袋が主なものとなりました。調達までの流れでは、各協定締結先とも比較的スムーズに連携を取ることができましたので、特段困ったことはありません。
 近年は想定外の事態の発生が増えていますので、今後も各協定締結先には協定内容を幅広に解釈していただき、より柔軟に対応していただきたいと考えております。
 県から被災市町村に対する支援物資として、県が備蓄していた毛布300枚を提供しましたが、これは昨年度中に補充済みです。
 県では平成30年度に備蓄物資の種類及び数量を定めた県災害備蓄指針を改定し、現在は当該指針に基づいて食料品等の使用期限のあるものを中心に更新を行っているところです。

  4.今後想定している取組や課題について

 この度の台風第19号では、台風接近までに県内市町村において、明るい時間帯での早期避難を住民に対して呼びかけたところでしたが、実際には多くの住民が夜間に避難行動を取ったことが判明しています。住民の早期避難を促すためには、平常時から市町村がハザードマップを活用し、住民に対して居住地域の災害リスクを分かりやすく説明するほか、地域の防災士や防災リーダーが中心となり、市町村と連携して防災意識の向上を図る取組を進めることが大変重要です。
 また、市町村が行う避難情報の発令や県が行う防災情報の発信に当たっては、住民に対して差し迫った危機感が確実に伝わるよう、工夫していかなければなりません。

5.他自治体へのアドバイスや、注意していただきたい点について

 岩手県では、平成29年に国、県、有識者で構成される「岩手県風水害対策支援チーム」を設置しています。このチームは、台風等による風水害が予測される場合に、市町村の避難勧告等の発令状況を把握し、被害の発生が予想される地域の絞り込みを行うとともに、市町村からの相談に対応するなど、市町村における風水害対策の支援を行っているものです。
 今回の台風第19号では、この岩手県風水害対策支援チームを2回招集して対応について検討を行い、県から市町村に対して、本県に大きな被害をもたらした平成28年台風第10号を凌ぐ暴風雨となる予想であり、早期に警戒体制を確立すること等の助言を行いました。その結果、市町村からは、避難勧告等の発令に当たり、助言が参考となったとの声が寄せられたことから、市町村における避難勧告等の発令を支援するための仕組みを構築することは有効であると考えています。

※災害対策本部支援室
 各部局の利害関係から切り離した災害対策本部の直轄組織であり、被害情報を一元的に収集して評価・分析する情報班、災害対応の優先順位を決定し、消防、自衛隊、救援物資等の資源配分を実施する対策班、住民に安心感を付与し、メディアに適切な情報を提供する広報班、政府現地災害対策や視察対応、災害対策本部員会議運営を実施する総務班、他県からの応援を調整する受援班、それらの活動の全体をコントロールし、円滑、効果的に運営させる統括班で構成される。
 この岩手県の災害時の体制はICS(シンシデントコマンドシステム)[危機対応システム]として、米国で開発されたもの。指揮統制や、調整、組織運用などが標準化されている。岩手県が先鞭をつけ、全国的にも有名になり、また各自治体も採用している。

POINT
■対応やマニュアル

災害対策本部は規定に基づき概ね円滑に運営。
本部支援室においては、長期的な運営に関する規定がなく適宜定めて実施。

■物資調達

要請から調達までは、協定締結先との連携がスムーズであり問題はなかった。


■今後の取り組み等

・本部支援室運営マニュアルの修正と検証。

・協定締結先と、協定内容の柔軟な解釈について共有。

・市町村と連携した防災意識向上を図る取り組みの強化と、防災情報や避難情報発信のさらなる工夫。