防災体制における官民の役割と連携・協力はどうあるべきか

これまでの経験・体験を踏まえた、災害対応の課題と今後の対応 これまでの経験・体験を踏まえた、災害対応の課題と今後の対応
(司会)NPO法人コメリ災害対策センター 笠原 治清

これまでの経験・体験を踏まえた、災害対応の課題と今後の対応

笠原 そうしたさまざまな過去の災害体験から、今後の災害時の対応における課題をお聞かせください。

野田 今後の地震・津波対策として重点的に検討すべき事項が明らかになってきました。地震、津波に共通するものは道路ネットワークの確立です。救援物資を運搬するにも、職員を派遣するにも、必要なものは道路です。
空路も海路も可能性が限られる中で、強い道路がどうしても必要です。阪神淡路大震災後、設計基準が改定され頑丈になっていますし、耐震補強対策も進んではいますが、地震の揺れで壊れる橋もあります。予防的に地震に強いものを作る必要があります。
 ミッシングリンク(高速道路等の未整備区間)の解消も重要な課題です。高速道路はつながっていれば、何通りもの経路で現地に行くことができます。ネットワークとして機能するよう整備しなければなりません。 例えば、南海トラフ地震の危険性が高まる中部地方において、内陸部から沿岸部へ、北陸地方から東海地方への、信頼性の高い道路ネットワークの確立が急務です。海岸線を通る道路は、巨大地震が起きれば短時間で大津波に見舞われます。山側を通る道はトンネルと橋ばかりでお金はかかりますが、南北の軸としての整備が必要です。

 東日本大震災では、津波を考慮して高台に整備された三陸縦貫自動車道は、ほとんど無傷でした。ものが運べなければどうしようもありません。お金がかかっても災害に強い道路をあらかじめ作っておくことが今回の教訓であり、震災に学んだことです。
 また、宮城県女川町では高さ16メートルの高台にある女川町立病院と女川町在宅介護支援センターは大きな被害を免れ、避難所として大勢の人を受け入れました。災害を念頭に置き、公共施設は高台に立地することも大切です。
 東日本大震災は1000年に1回クラスの災害でした。これを前提としてハードを作れば、現実離れした施設ばかりになります。ハードは100年に1回クラスの災害を前提に作り、1000年に1回クラスの災害は緊急時の避難などをソフトとして考える。ハードとソフトをセットで考えることが大切であり、そのための訓練も必要です。

最大級クラスの津波への対応計画

東日本大震災では甚大な津波被害が発生した。最大級クラスの津波への対応計画。

 北陸地方整備局では、広域かつ大規模な災害の発生に備え、災害対策に関する情報の共有及び施策の連携を行うことを目的に平成24年に設立した「北陸防災連絡会議」メンバーを、これまでの33機関から101機関へと拡大強化しました。これらのメンバーと具体的かつ実践的な対策計画を検討していきます。

笠原 コメリも過去に数々の災害体験があります。今後の災害時の対応における課題はいかがですか。

 物資供給以外も積極的に協力させていただきたいと思います。先ほど災害対策用ヘリコプターのお話がありましたが、いざという時、コメリ店舗の駐車場を防災拠点として活用していただける体制を作りたいと考えています。
 またこれまでの経験に基づき全国のセンターに物資を備蓄していますが、九州での口蹄疫や関東の豪雪など初めての災害では想定外のことも多く、備蓄物資の見直しなどの課題も見えてきました。また災害ごと、時間の経過とともに必要となる物資は変化しますので、より一層備蓄の充実を図りたいと考えています。
 何より一番重要なのは役割分担だと思います。店にできること、災害対策センターにできること、そして国や県、市町村などの行政ができることがそれぞれあると思います。私どもは物資を用意し、運ぶことはできますが、それは道路が使えて初めてできることです。毛細血管に血液が流れるようにスムーズに物を運べるインフラの確立が必要です。実は東日本大震災の時、乾電池が店頭から消えてしまいました。ある機関が被災地に持っていくため、倉庫に集めていたそうです。倉庫にストックされた乾電池はなかなか被災者の元へは届きませんでした。その一方で、店頭には乾電池がなく、お困りのお客様が大勢おられたので、あらゆる方面から乾電池の手配をしました。あの時は本当に大変でした。どういう時に、誰が何をするのか、しっかりと役割分担をすべきだと思います。

NPO法人コメリ災害対策センターの紹介

当センターの母体である株式会社コメリでは平成2年に「コメリ緑資金」を設立し、利益の1%を日頃お世話になっている出店地域の緑化活動にお役立ていただいています。これまでの被災経験から災害対策に永続的に取り組むために、コメリ緑資金より助成を受け、平成17年9月にNPO法人コメリ災害対策センターを設立しました。
 現在、全国9ヶ所の物流センターに災害復旧用品を備蓄し、全国503の自治体や団体と災害時支援協定を締結しています。災害発生時には被災地域からの物資要請に基づき、コメリグループの物流、店舗網を活かして物資を供給しています。また、支援協定締結自治体が主催する防災訓練に積極的に参加しているほか、年2回発行の広報誌「サポート」やホームページを通し、過去の被災記録をデータベース化し、協定締結先自治体や団体との情報共有を行っています。