防災体制における官民の役割と連携・協力はどうあるべきか

常に災害に備えるために。防災啓発活動の取り組みと連携について 常に災害に備えるために。防災啓発活動の取り組みと連携について
(司会)NPO法人コメリ災害対策センター 笠原 治清

常に災害に備えるために。防災啓発活動の取り組みと連携について

笠原 大規模な災害が起こった際、市民も含め正しい知識のもとに行動できるかが重要だと思います。防災啓発活動の内容をお聞かせください。

野田 災害への備えとしては自助、共助、公助があります。食料3日分の備蓄などは自助、コミュニティの助け合いは共助、行政が講じるものが公助です。
 まずはお住まいの場所がどのような危険性を持っているかを知っていただきたい。昨年、地盤の専門家と新潟県、富山県、石川県の「液状化しやすさマップ」を作成しホームページで公表しました。土地利用する際や防災に、ぜひ活用していただきたいと思います。
 新潟県では津波浸水想定区域を公表しています。50年前の新潟地震では2~3メートルの津波が押し寄せ広範囲に浸水し、なかなか水が引かず、水道復旧工事に1ヶ月、ガス復旧工事に半年など、復旧復興に大変な影響があったことから、事前に浸水対策を行う必要があります。
 また、新潟県は土砂災害の大変多いところです。土砂災害ハザードマップを見ると、土砂災害の危険や地滑りの恐れもわかります。自分たちが住むところの危険性を頭に入れておくことが大事でしょう。地震は瞬間に来ますが洪水にはリードタイム(危険度を判断する時間)がありますから、行政からの防災情報がなくとも自分自身の身を守れるよう、情報をどんどん使ってほしいと思います。洪水時に川に様子を見に行くのは大変危険です。NHKの地デジでは24時間新潟県内の川の水位を見ることができます。新潟県のホームページでもご自宅の近くの川の様子がリアルタイムで確認できますから、自分自身で考え防災活動を行ってください。

 今年は新潟地震から50年、新潟焼山火山災害から40年、中越地震と7・13水害(新潟・福島豪雨)からちょうど10年の節目の年に当たります。そこで、新潟県の皆さんと一緒に「教訓を伝えて活かすまちづくり」をキャッチフレーズに、災害に負けない新潟、災害に強い新潟をテーマとした「防災・減災新潟プロジェクト2014」を、この1年間、展開します。
 自分が住んでいる場所の危険性を知ることは大切です。災害は必ず繰り返します。そして上限はありません。この地域には昔なにがあったのか。今、住んでいるところの過去の災害を知ることはとても大事なのです。

防災・減災新潟プロジェクト2014の概要

防災・減災新潟プロジェクト2014の概要

 新潟地震では4階建て県営アパートが無傷のまま倒れ、液状化が注目を集めるきっかけになりました。昭和石油新潟製油所の石油タンク火災は、石油コンビナート火災の原点だといえます。新潟国体に合わせて作った昭和大橋の落橋により、橋の耐震基準が変わりました。
 過去の自然災害から得られた貴重な教訓を風化させることなく後世に語り継ぎ、社会全体で防災・減災に備えるのが、この「防災・減災新潟プロジェクト2014」です。ぜひ多くの企業・団体など皆さんに参加していただきたいと思います。

笠原 40年50年が経つと災害の記憶が風化してしまうところがあります。その風化に対して各種情報提供も必要だと思います。コメリ災害対策センターの啓発活動についてお話しください。

 ホームページに過去の災害事例を紹介しています。自治体の皆様にご協力をいただき、災害記録写真を掲載したり、災害別に必要となる物資の情報をまとめて公開しています。どのような災害時に何が必要になるのか。様々な情報を公開していますので、ぜひ防災計画にお役立ていただきたいと思います。また広報誌「サポート」では被災した自治体の体験談や防災計画等も紹介しています。
 さらに各地での防災訓練にも積極的に参加させていただいています(写真2)。昨年度は51ヶ所へ参加させていただきました。コメリの店舗や地区本部のスタッフも参加します。実際に災害が起こった際の物資の要請は電話1本、FAX1枚のやりとりですが、普段からお互いに顔が見える関係づくりを心掛けています。「防災・減災新潟プロジェクト2014」についても積極的にホームページや広報誌で紹介し、大型店の店頭にはPRのパネルを掲示させていただきます。

啓蒙活動の一環とした各自治体の防災訓練への参加

(写真2)啓蒙活動の一環とした各自治体の防災訓練への参加

笠原 今回のテーマ「官民の連携」についてお話しいただきたいと思います。どうすればスムーズに官民が連携できるのか、それぞれの立場からお聞かせください。

野田 官民の連携は極めて重要なテーマです。先ほど「北陸防災連絡会議」の話をいたしましたが、議論の主眼は北陸地域の防災と南海トラフ、首都直下型地震の支援です。被災地はどうなっているのか、どこに何をいつまでに送ればいいのか、そして道路の状況はどうなっているのか。北陸信越運輸局や県トラック協会、地元建設業協会などと議論を重ねています。
 捧副理事長さんの話を伺ってNPOとして素晴らしい活動をなさっていることがよくわかりましたが、特に素晴らしい点は、BCP(事業継続計画)についてです。時系列で非常時にはこういう手順で何をどうするかということが、まさしくBCPです。私どもにもBCPがありますが、特に民間の流通業界にも必要ですし、現場での復旧活動に関わる建設業界にもBCPは必要だと思っています。
 余談ですが、避難所へ救援物資を供給する際、新潟県は避難所のリストを流通業者に渡し「ここへ届けてください」とお願いするそうです。それは東日本大震災の教訓。東日本では物資がどんと役場へ届き、その先は誰も配れない状態でした。先ほど捧副理事長さんがおっしゃった、毛細血管のように物を流すインフラの確立がまさしくそのことなのです。避難所までのロジスティクスをどうするかは非常に重要なことです。行政単独では、そこへ運ぶ手段をまったく持っていないので、流通業界の皆さんにお願いするより他ないだろうと思います。そこについて、行政と流通が密に連携できると大変いいなと思います。

 やはり情報の共有化は重要だと思います。いち早く現場に赴き、被害状況や道路状況など情報を集められるのは行政です。その情報を共有できれば、より迅速に対応できると思います。災害に対してどう対処するかというベクトルは同じだと思いますので、北陸地方整備局の取り組みを力強く思いました。良いチームワークは情報の共有化があって初めて成り立ちます。平時から役割分担のシミュレーションをし、お互いに顔が見える良い関係を築ければ、いざという時困らないでしょう。

 また私どもは約50人が寝泊まりできるエアロシェルター(写真3)を持っています。コメリの駐車場にこれをたて、一時避難所としてもお使いいただけます。また東日本大震災では車で避難中に渋滞に巻き込まれ、命を落とされた方が大勢いらっしゃいました。渋滞の一因は道路に放置された車だそうです。それでしたら店舗の駐車場に車を止めて逃げていただくこともできると思います。他にも行政所有の除雪車の駐車など一時的な提供はいくらでもできると思います。コメリの1150店舗をインフラとして積極的に活用していただければと考えています。
 官民で情報を共有し、ひとつのことに臨んでいくことが、これまで以上に重要だと考えます。

緊急避難所としての活用もできるコメリ災害対策センターのエアロシェルター

(写真3)緊急避難所としての活用もできるコメリ災害対策センターのエアロシェルター

笠原 平時にお互いの顔が見える関係にしていないと、いざというときには対応できません。またこういう機会に官民でお話しさせていただければと思います。今日はどうもありがとうございました。

活動報告 コメリ災害対策センターの活動をご紹介します。

 NPO法人コメリ災害対策センターでは、広報誌「サポート」を年二回発行し、平常時における全国の各自治体との情報交換に努めております。各自治体における災害対策への取組みや支援協定の締結状況、当センターの活動などをご紹介しており、各方面での災害対策にお役立ていただければ幸いです。

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