新たな物資配送のニーズを探る

公益社団法人 中越防災安全推進機構 対談 公益社団法人 中越防災安全推進機構 対談
(聞き手)NPO法人コメリ災害対策センター 古澤

「避難所の運営は自分達でやらなきゃいけないんだ」という意識づけが大切。

古澤 コメリ災害対策センターは、内閣府主催で年2回行われる『防災スペシャリスト養成研修』に毎年出講させていただいて、自治体職員に物資配送についての講演を行なっています。
 また今年は、三重県熊野市で市の職員と自主防災組織向けに、それぞれ避難所運営に関しての講演を行なう機会もあり、各地で避難所に対しての意識の高まりを感じています。
  先日の白山市出城地区での訓練では、中越防災安全推進機構より講演をしていただきました。このような自治会を対象とした講演会の依頼は多いのでしょうか。

河内 そうですね。新潟市などの行政から避難所運営のワークショップ等の依頼をいただくことが多いです。

古澤 出城地区の講演では自治会が対象でしたが、小学生や一般の住民を対象とした講演などもあるのでしょうか。

諸橋 小中学校から授業で避難所の事を話して欲しい、避難所のような状況で自分達の出来ることを考えさせるような授業をして欲しい、というような依頼もあります。

古澤 経験がないから経験を伝えて欲しい、ということでしょうか。この様な依頼には、どんな狙いがあると思われますか。

諸橋 過去の例では、行政はいざ避難所が開設されたら、地域で運営をして欲しいという考えを持たれていました。そこで、そのための心構えや、具体的な運営方法などのノウハウを、自主防災会の人々に教えて欲しいという内容で依頼をいただきました。

河内 おそらく行政が、「避難所はある程度地域の皆さんに運営してもらわないと回りませんよ」ですとか、行政や施設管理者との顔合わせは必要だという事をお伝えするというところが、第一歩だと思います。それがない地域は「避難所って自分達が運営するの?」という意識なので、「最初から自分達でやらなきゃいけない」という意識付けがある所は珍しいと思います。

古澤 そうですよね。防災訓練等で、行政の方や、住民の方々の話を伺う機会がありますが、「行政の方が運営まで全てやってくれるんだ」という意識の方が多いと思います。
 そのような研修の他に、学校などにお邪魔して出前授業を行なっているということですね。

諸橋 小学校の場合は、学校が避難所になるケースが多いのですが、そうなるとまず先生方も具体的なイメージが出来ていないので、運営などについて学びたいという要望もあります。そしてやはり子ども達には、災害時には学校が避難所であり、学ぶスペースでもあるということを普段からイメージして欲しいという事もあります。中学校であれば、そのような状況で生徒達が自ら出来る事を探し、率先して行動して欲しい、そのような姿勢を身に付けて欲しいという依頼が多くなります。
 そこまで具体的に依頼される訳ではありませんので、避難所というテーマで生徒に何かやって欲しいという依頼を基に、こちらから提案する場合が多いです。熊本地震の時にどうだったかという状況を見て、生徒達に自分達で出来る事を考えさせるような授業はどうかと提案します。そのような形の授業ですと、生徒達は案外真剣に考えますし、限られた時間ですが仲間と協力して出来る事を考えたりしますので。

配送のプロからレクチャー

供給された物資をいかに安全に積むか、配送のプロからレクチャーをおこなった。

古澤 今回の訓練等でも機構の皆さんが、「自ら気付く」ということを非常に大事にされていると感じました。

諸橋 防災に限らず、知識として知っているのと、実際に行動に移せるかというのは全然違っていて、特に災害の場合は知っているだけでは何の意味もありません。そこで一歩踏み出すためには何が必要か、自分で気付くことができるかが大切です。
 防災というと、「自分の命は自分で守る」と掲げられていますが、授業で「自分の命は自分で守ましょう」と言うのは、5秒で終わります。でも、そんなに簡単じゃないんです。本当に言葉を深いところで理解して行動に移すとなると、私自身も出来るかどうか分かりません。言葉としては皆知っていますが、それを子どもなり、人にさせるというのは、なおさら難しいことです。少なくとも教えるより、どうやって自ら気付くような場をデザインするか、という視点で資料なども作成しています。

古澤 そうですね、そういった部分で非常によく出来ているなと思い拝見していました。
  その中で、先日の出城地区では住民の方々に搬入訓練を行なってもらいましたが、実際にご覧になっていかがでしたか?

河内 一番シンプルですが、住民の皆さんが「災害時には自分で搬入作業をやらないといけないんだ」と思う事が一番大事だと思うんです。傍から見せるだけであれば、「避難所での作業は行政がやるもの」、「自分は被災してかわいそうな立場だから、自分達でやらなくても誰かがやってくれるだろう」、という考えになってしまいます。
 我々が運営のワークショップなどをやっても、地域の一部の人の参加で終わってしまう事が多いんですが、今回は大人から子どもまで体を動かしましたよね。小学生の女の子が「こういう事をやるんだ。みんなで力を合わせて避難所を運営してい かなきゃいけないんだ」という事を話し掛けてくれました。参加者にそういった認識が生まれたことが一番大きかったと思います。

物資の積み方